Stableチェーンとは?TetherのUSDT専用レイヤー1ブロックチェーン徹底解説

Stableチェーン(Stable)はTetherが開発したレイヤー1ブロックチェーンで、ステーブルコイン決済・送金に特化した設計を持ちます。USDT0をネイティブガスおよび送金単位として採用し、ユーザーは揮発性のガスコインを別途保有せずドル建てでトランザクションを完結できます。別途STABLEトークンがガバナンス・ステーキング・バリデータ報酬を担うデュアルトークン構造です。StableBFTコンセンサスでサブ秒のファイナリティを目標とし、EVM互換性とLayerZeroによるクロスチェーン接続も備えています。

Stableチェーン(正式名称:Stable)は、ステーブルコインによる決済をブロックチェーンのデフォルト機能として設計したレイヤー1ブロックチェーンです。USDTを発行するTetherが開発し、USDT0というUSDTの派生資産をネイティブガスかつ送金単位として採用しています。別途、STABLEトークンがガバナンスとバリデータ報酬を担うデュアルトークン構造を持ちます。サブ秒のファイナリティ、EVM互換性、ドル建てのガス料金という三つの特性を組み合わせ、「ステーブルコインを普通のお金のように使える」インフラを目指しています。暗号資産ウォレットに揮発性のガスコインを別途保有する手間を排除した設計は、デジタル決済の新しい方向性を示しています。

Stableチェーンが生まれた背景

現在、USDTはEthereum、Tron、Solanaなど複数のブロックチェーン上で流通しています。しかしいずれのネットワークでも、ステーブルコインの送金はNFTミントやDeFiスワップ、ミームコイン取引と同じブロックスペースを奪い合います。その結果、混雑時には手数料が急騰し、確認時間も読めなくなります。

Stableチェーンはこの問題を根本から解決しようとしています。ブロックスペースをステーブルコイン決済に特化させることで、無関係なトラフィックによる混雑の影響を受けにくくしているのです。

解決を目指す3つの課題

1. 断片化(Fragmentation) 同じUSDTが複数のネットワークに分散し、ユーザーはブリッジ操作や手数料体系の違いに悩まされます。Stableチェーンは単一の決済レイヤーにUSDTをまとめる設計です。

2. 手数料の不確実性 一般的なチェーンでは、ガス料金がETHやSOLなどの揮発性トークンで請求されます。コインの価格やネットワーク混雑次第でコストが変動するため、企業や個人が決済コストを正確に見積もるのが難しくなります。

3. 決済に最適化されていないインフラ ステーブルコインの利用の多くは「送金・受取・決済」という繰り返しの定型処理ですが、汎用チェーンはそのパターンに特別な優先権を与えていません。

ステーブルコインの仕組み全般については、ステーブルコイン完全ガイドをあわせてご覧ください。

技術的な仕組み

コンセンサスとファイナリティ:StableBFT

StableチェーンはStableBFTと呼ばれる独自のByzantine Fault Tolerant(BFT)コンセンサスを採用しています。CometBFTをベースにカスタマイズしたプルーフ・オブ・ステークプロトコルで、構造的にはデリゲーテッド・プルーフ・オブ・ステークに近い仕組みです。

主な特徴は以下の通りです:

  • 決定論的ファイナリティ:一度確定したトランザクションは覆りません。送金が完了したとみなせるまでの時間が明確です。
  • サブ秒の目標:1秒未満でブロックが確定するよう設計されており、実際の決済体験に近い速度を実現します。
  • 耐故障性:バリデータの3分の1までが不正または障害状態でも、ネットワークの安全性が維持されます。これは決済インフラとして必須の特性です。
📷 StableBFTによるブロック確定フロー図(ユーザー署名→プロパゲーション→バリデータ合意→ファイナリティ)

ガス・送金・クロスチェーン

Stableチェーンの最大の特徴は、USDT0をガスと送金の両方に使う点です。たとえばEthereumでは、USDTを送るためにETHをガスとして別途保有する必要があります。Stableチェーンでは、USDT0さえあればガスも送金もまとめて完結します。

ガス料金モデルはEIP-1559方式をベースにしており、料金がUSDT0建てで表示されます。つまり「今日の送金コストはいくらか」がドル相当の単位で一目でわかります。

クロスチェーン接続にはLayerZeroを採用。各チェーン上のイミュータブルなエンドポイントを通じて検証済みメッセージをやり取りする仕組みで、単一の管理者に依存するカストディアル型ブリッジとは異なるアプローチです。

詳しいネットワーク手数料の仕組みは暗号資産ネットワーク手数料ガイドで解説しています。

EVM互換性

StableチェーンはEVM互換であり、Ethereumのウォレット、ツール、Solidityで書かれたスマートコントラクトをそのまま再利用できます。開発者の学習コストを最小化しながら、ステーブルコイン特化の環境を提供する狙いがあります。

デュアルトークンモデル:STABLEとUSDT0

Stableチェーンは「使うトークン」と「運営するトークン」を明確に分離しています。

項目STABLEUSDT0
主な役割ネットワークの運営ネットワークの利用
機能ガバナンス・ステーキング・バリデータ報酬送金・ガス支払い
保有者バリデータ・デリゲーター・ガバナンス参加者決済ユーザー全般
価格特性コーディネーション資産(変動あり)ドル連動の安定単位
供給量上限1,000億トークンUSDT発行量に連動

STABLEトークンの総供給量は1,000億トークンに設定されており、チーム・投資家向け、エコシステム・コミュニティ向け、ジェネシス配布向けの3バケットに分割されています。各バケットにはベスティングスケジュールが設けられており、急激な供給増によるショックを抑える設計です。これはトークノミクス評価の基本観点です。

たとえると、クレジットカードネットワークに似た構造です。利用者はドルで支払い、カード会社の株式(STABLEに相当)は保有しなくていい。しかし会社を運営するためには株主(バリデータ)が必要です。

他のブロックチェーンとの比較

📷 Stable・Ethereum・Tron・Solanaの主要パラメータ比較表グラフィック
ネットワーク設計目標ガス単位ファイナリティUSDTの位置づけ
Stableステーブルコイン決済特化USDT0サブ秒目標(StableBFT)決済資産+ガス資産
Ethereum汎用スマートコントラクトETH(gwei)条件により変動人気トークン(ガスはETH)
Tron送金最適化帯域幅/エネルギー+TRX高速確認主要決済トークン(ガスはTRX)
Solana高スループットアプリSOL(lamports)高速確認対応トークン(ガスはSOL)

具体的な手数料の例:500ドル送金の場合

Ethereumの場合:

  • ウォレットにUSDT+ETH(ガス用)の2種類が必要
  • ガス代はETH価格と混雑度次第で変動。平常時0.5ドル程度でも、混雑ピーク時に5〜10ドルに跳ね上がる場合あり
  • 受取人への着金確認まで数十秒〜数分かかることも

Stableチェーンの場合:

  • ウォレットにUSDT0のみ保有
  • 手数料は約0.01 USDT0(ドル建て固定)
  • 送金後の表示:「500.00 USDT0 送金済み、手数料 0.01 USDT0」
  • 追加のガストークン補充不要

この「1資産・1通貨」の体験が、Stableチェーンが最も強調する差別化ポイントです。

機関投資家・フィンテック向けの設計要素

Stableチェーンは個人ユーザーだけでなく、企業・金融機関向けのインフラとしても設計されています。注目すべき機能が「保証されたブロックスペース(Guaranteed Blockspace)」です。

これは、企業の決済フロー(給与支払い、仕入れ先への送金、精算処理など)のために、混雑時でも一定のキャパシティを予約できる仕組みです。ネットワークが混雑しても、企業フローが後回しにされません。

PayPal VenturesがPYUSDの普及を目的にStableチェーンへの関与を検討しているとも伝えられており、主流の決済ブランドがステーブルコインレールに注目していることを示しています。

📷 機関向け「保証ブロックスペース」概念図(通常トラフィックと企業専用レーンの分離)

リスクと注意点

Stableチェーンを評価する際には、以下のリスクを把握しておくことが重要です。

中央集権リスク チェーンのアイデンティティが単一のステーブルコイン発行体(Tether)と深く結びついています。アップグレード、バリデータ選定、ポリシー変更における影響力の集中が懸念されます。

規制リスク 高頻度の国際送金や機関決済を処理するインフラは、規制当局の監視対象になりやすい分野です。地域によっては、コンプライアンス要件がサービス利用に影響する可能性があります。

信頼とトランスペアレンシー 決済システムは準備金の透明性と換金保証に対する信頼で成立します。USDTの準備金に関する認識は地域・文脈によって異なり、これがStableチェーン採用のハードルになる場合があります。

ネットワーク効果の壁 Ethereum・Tron・Solanaには既存の流動性、ウォレット対応、取引所統合という強固なネットワーク効果があります。Stableチェーンはこれらに加え、Layer 2ソリューションとも競合します。

インテグレーション段階 入出金対応、ウォレット統合、流動性の広がりが揃って初めて決済チェーンとして機能します。現時点ではテストネットとメインネットが稼働中ですが、エコシステムはまだ形成段階です。

今後のロードマップ

  • 保証ブロックスペースの拡充:企業フロー向けキャパシティ予約の精度向上
  • USDTトランスファーアグリゲーター:複数の送金をバンドル処理するスループット向上機能
  • コンフィデンシャルトランスファー:金額を秘匿しつつコンプライアンス要件を満たすプライバシー機能

COINOTAGの視点

Stableチェーンの意義は、ホワイトペーパーの内容よりも「三つのものを同時に獲得できるか」にかかっています。それは信頼規制適合性、そして実際の統合です。

USDT0をネイティブガスにするという技術的な賭けは論理的であり、現実の痛点を突いています。しかしアーキテクチャ図だけで決済ネットワークは動きません。流動性と取引相手のサポートが伴って初めて価値が生まれます。

現実的な見方をすれば、Stableチェーンはステーブルコインが「単なるトークン」から「専用決済レール」へと進化していく方向性を示す重要なシグナルです。一方で、Tetherという単一エンティティへの依存度が高いという集中リスクも同時に内包しています。インフラとしての潜在性と集中リスクを等価に評価し、エコシステムの成熟を見極めることが重要です。

最終更新: 2026/6/15

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