クラリティ法案めぐり攻防、コインベースがスペースXのプレIPO先物開始、大手銀はトークン化預金で対抗

(22:45 UTC)
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暗号資産ニュース

ホワイトハウスの暗号資産担当上級顧問パトリック・ウィット氏は6月4日、Blockchain Associationが主催したオンラインのタウンホールミーティングで、米国の暗号資産市場構造法案「クラリティ法案(CLARITY Act)」を「規制推進であり、法執行機関寄りの法案だ」と強調した。金融犯罪対策が不十分とする一部法執行機関側の反発に対し、ウィット氏は「資金は世界的にますます速く移動しており、米国が基準を設定しなければ他国のルールを押しつけられる」と述べ、米国主導の規制整備を訴えた。会合にはシンシア・ルミス上院議員、トム・エマー下院議員も参加し、年内可決を促した。ブロックチェーンの規制確実性をめぐる議論は最終局面を迎えている。

コインベースは6月3日、新カテゴリーとなる「プレIPO無期限先物」を立ち上げ、第1弾としてスペースX(SpaceX)の「SpaceX Pre-IPO Perpetual Future」の取り扱いを開始した。米国外の適格トレーダーを対象とし、推定時価総額を参照指標とするUSDC決済の永続先物契約として設計されている。24時間365日取引可能で満期もロールオーバーも発生せず、IPO完了時には発行済み株式数と公開株価を基準に、通常の無期限先物へ自動移行する仕組みだ。同社は既存のビットコイン関連デリバティブのインフラを流用し、これまで機関投資家に限られていた非上場企業へのエクスポージャーを個人にも開放した。AI・宇宙・エネルギー分野で続く銘柄上場も検討中という。

JPモルガンのアナリストは今週公表したリポートで、クラリティ法案の年内成立余地が縮小していると警告した。マネジング・ディレクターのニコラオス・パニギルツォグル氏は、5月14日に上院銀行委員会を15対9で通過した後も、本会議での60票確保、下院との条文すり合わせ、大統領署名という3段階の手続きが残ると指摘。夏季休会後の審議期間は9週間程度に限られ、中間選挙が近づくにつれ政治的インセンティブが変化し、「成立前と成立後で内容が大きく異なる可能性」があるとする。市場関係者の間では、規制不透明感の長期化がDeFi領域の投資判断にも影響するとの懸念が広がっている。

同リポートが「核心的な争点」と位置づけたのが、ステーブルコイン保有への利回り付与の是非だ。現行のクラリティ法案テキストは、残高に対する受動的な利息支払いを禁じる原則を掲げる一方で、決済・取引・ロイヤルティプログラム連動の報酬は認める設計になっている。だが「禁止が明示されていない」ため、銀行と暗号資産企業の間に解釈の余地が残るとアナリストは指摘する。受動的利回りに実効規制が課された場合、暗号資産分野の待機資金がトークン化国債やデジタルマネーマーケットファンドへ流入する傾向がさらに強まる可能性がある。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは先週、銀行と同等の規制なしに利息類似商品を提供できる状態には反対する姿勢を明確にしていた。

その銀行業界の反撃を象徴する動きとして、JPモルガン、シティグループなど大手金融機関が新たなトークン化預金システムを共同で計画していることが明らかになった。各行はクリアリングハウスを活用し、預金情報をブロックチェーン上に記録する基盤を構築する見通しだ。狙いは、ステーブルコインや暗号資産プラットフォームに流出しつつある決済・送金需要の取り戻しにある。トークン化預金は24時間決済とプログラマビリティを備えながら、銀行の預金保険制度と監督下にとどまる点で従来型ステーブルコインとは異なる位置づけとなる。規制論争が続く中、伝統金融側が独自のオンチェーン決済インフラを並走させる構図が鮮明になってきた。

規制をめぐる別の論点として、トランプ大統領が指名した通貨監督庁(OCC)長官ジョナサン・グールド氏が下院金融サービス委員会の公聴会で議員からの追及を受けた。民主党のグレゴリー・ミークス議員は、トランプ家のメンバーが共同創設者を務める暗号資産企業ワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial)が1月に申請した全国信託銀行免許の審査を、他社と同基準で扱うよう求めた。OCCはすでにコインベース、リップル、サークル、フィデリティ・デジタル・アセッツなど複数の暗号資産企業に信託免許を付与・条件付き承認している。グールド氏は政治的圧力を受けていないと反論したが、ホワイトリバティへの審査結果が次の焦点となる。

これらの動きを貫く共通テーマは、規制枠組みの最終形成期における「主導権争い」だ。ホワイトハウスと議会共和党はクラリティ法案の早期成立を急ぐ一方、JPモルガンの分析は政治カレンダーの厳しさを浮き彫りにする。ステーブルコイン利回りをめぐっては銀行が独自のトークン化預金で対抗し、コインベースはプレIPO先物で伝統金融の壁をさらに崩しにかかる。OCCの信託免許審査では政治と監督独立性のせめぎ合いが続く。年内の立法成否は、伝統金融とデジタル資産業界の境界線を再定義する分水嶺となる公算が大きい。

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Yuki Tanaka

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