via NADA NEWS · NADA NEWS編集部著
サンフランシスコ市場レポート── CLARITY法、最終局面と“オンチェーン金融国家”への転換
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エックスウィン アメリカマーケットリサーチアナリストのデリア・ロホです。サンフランシスコから、現在の米国暗号資産市場における最重要テーマであるCLARITY法と、アメリカ政府のブロックチェーン戦略についてお伝えします。
5月8日、米証券取引委員会(SEC)の Paul Atkins 委員長は、ワシントンD.C.で開催されたAI+ Expoにおいて、ブロックチェーン金融とAIに関する重要な講演を行いました。今回の発言で特に注目されたのは、SECが「オンチェーン金融」を既存金融の延長ではなく、新しい市場インフラとして認識し始めた点です。アトキンス委員長は、現在のブロックチェーン型システムでは、取引執行、担保管理、流動性供給、決済などの機能が単一のプロトコル内に統合されていると説明しました。
そのためSECは、オンチェーン取引システムや暗号資産ボールト(Vault)、ブロックチェーン決済、自動化金融アプリケーションなどに対するルール整備を検討し、「取引所」の定義そのものの見直しにまで言及しました。またAIについても、人間の能力を拡張する技術として位置づける一方、判断プロセスの不透明化や同一AIモデルへの依存リスクにも触れています。ただ同氏は、「SECの役割は勝者を選ぶことではなく、公正なルールを整備することだ」と強調しました。

私は今回のスピーチを聞きながら、アメリカが単に“暗号資産規制”を進めているのではなく、「次世代金融インフラ」を国家戦略として取り込み始めていると強く感じました。そしてその背景には、アメリカという国が建国以来持ち続けてきた“イノベーション国家”としての思想があります。
私は今回、改めてアメリカ建国期の歴史を振り返る中で、初代大統領 George Washington が1790年の一般教書演説で、「新しい発明とイノベーションを奨励すべきだ」と議会へ呼びかけていたことに注目しました。そして同年、アメリカでは近代的な特許制度と著作権制度が整備されています。さらにアメリカ憲法第1条第8節では、「科学と有用技術の発展を促進するため、発明者と著作者の権利を保護する」と明記されています。
つまりアメリカという国は、建国初期から「技術革新を国家成長へ転換する」という思想を制度として持っていたのです。実際、アメリカはこれまで、工業化、自動車、航空産業、半導体、インターネット、AIなど、常に“次世代技術”を国家競争力へ変えることで成長してきました。そして今、その次のテーマとして「ブロックチェーン」が位置づけられ始めています。
特に今回印象的だったのは、「人材流出を止めたい」という空気感です。これまで暗号資産業界では、規制不透明感によって多くの企業や開発者がシンガポール、ドバイ、香港、スイスなどへ移転してきました。しかし現在のアメリカは、その流れを変えようとしているように見えます。「アメリカへ来てほしい」「アメリカで開発してほしい」「アメリカでオンチェーン金融を作ってほしい」という意思が、政策全体から非常に強く伝わってきました。
私は長年サンフランシスコとシリコンバレーを見てきましたが、この地域はもともと“移民によって作られたテクノロジー都市”です。多くの起業家やエンジニアは第一世代、第二世代移民であり、アメリカは常に世界中から才能を集め、その技術を国内産業へ転換することで成長してきました。つまり現在の政策も、「世界中の才能を再びアメリカへ集める」という流れの延長線上にあるように感じます。
そのため現在進められている、
・CLARITY法
・GENIUS Act
・ステーブルコイン法整備
・オンチェーン金融制度化
・知的財産保護
・規制透明化
などは、単なる規制整備ではありません。むしろ、「次世代インターネット金融をアメリカ中心に構築するための環境整備」に近いものだと思います。
特に重要なのは、アメリカがこれを単なる“暗号資産市場”としてではなく、“次世代金融インフラ”として見ている点です。私は今回の議論を通じて、アメリカが本当にやろうとしているのは、単なるBTC価格上昇ではなく、ドル覇権維持、金融インフラ主導権維持、世界中の資本流入、そしてAIとブロックチェーンを融合させた新しい金融システムの主導権確保なのだと感じました。
特にステーブルコインは、「ドルをデジタル時代へ拡張するための武器」として見られている側面が非常に強い。もしドル建てステーブルコインが世界標準になれば、アメリカは従来以上に強い金融影響力を維持できる可能性があります。さらに、24時間動く市場、低コスト決済、RWA(現実資産トークン化)、DeFiと伝統金融融合なども進み始めています。つまり現在起きているのは、「暗号資産規制」ではなく、“金融システムそのものの再設計”です。
もちろん、まだ不透明な部分も多くあります。現在のアメリカ国内では、インフレ、生活費上昇、ガソリン価格高騰、住宅コスト問題などへの不満が非常に強く、株式市場は反発していても、多くの一般市民は「生活が良くなった」とは感じていません。そのため、現在の株高が本格的な景気回復なのか、それとも短期ラリーなのかを慎重に見極める必要があります。
