via NADA NEWS · NADA NEWS編集部著
「国債×ステーブルコイン」の市場構築へ──Progmat、オンチェーン・レポWG始動
Progmatは5月8日、デジタルアセット共創コンソーシアム(DCC)内に「トークン化国債・オンチェーンレポ ワーキング・グループ(WG)」を設置し、日本国債のトークン化と、ステーブルコインを用いたオンチェーン・レポ取引の共同検討を開始すると発表した。
狙うのは、国債を担保とする機関投資家向け取引のオンチェーン化だ。国債に関する権利をブロックチェーン上で管理可能にし、トークン化日本国債(Tokenized JGB、TJGB)を担保に、ステーブルコインで資金を貸し借りする仕組みの実現を目指す。
レポ取引は、国債などを担保に資金を調達・運用する短期金融取引。発表によると、国債を担保とした世界のレポ市場は2024年末時点で約16兆ドル、約2560兆円規模に達し、日本市場はその約10%を占める。
Progmatの齊藤達哉CEOは、同日公開したnoteで今回の構想について、「24時間/クロスボーダーに」「T+0のポジション構築/クローズが可能な」「国債をオンチェーンでレポ取引」する仕組みづくりだと説明している。
資金効率アップ、ステーブルコインの運用先にも
従来のレポ取引は、銀行預金を用いたT+1決済が前提だった。これに対し、今回の構想では、担保証券にTJGB、貸借資金にステーブルコインを用い、レンディングプロトコルを介してオンチェーン上で取引することで、T+0でのポジション構築・クローズを可能にすることを想定する。
資金の借り手にとっては、国債を担保にステーブルコインを調達し、日中に再投資・返済まで完結できれば、「イントラデイ・アルファ」、つまり日中の資金効率を高める機会になる。日跨ぎしない取引であれば、バランスシートやレバレッジ規制上の扱いにも新たな可能性が生まれる。
一方、ステーブルコインの貸し手にとっては、保有するステーブルコインの運用先となる。特に円建てステーブルコインについては、単に保有しているだけでは金利を生まないため、国債を担保とするオンチェーン・レポは、比較的安全性の高い運用手段になり得る。
さらに、USDCなどドル建てステーブルコインを保有する非居住者にとっては、オンチェーンFXで円建てステーブルコインに転換し、日本国債レポで運用することで、円転妙味を取り込む新たな取引経路になる可能性もある。
海外では実証が進展
海外では、米国債のトークン化とオンチェーン・レポ取引の実証がすでに進んでいる。2025年8月には、大手金融機関が参加するコンソーシアムが米国債とUSDCを用いたオンチェーン・レポ取引を実証。12月にはDTCCが、DTCで保管されている米国債をトークン化する計画を発表した。発表資料では、すでに約3392億ドル、約54兆円規模のレポ取引がオンチェーン化されているとしている。
金融商品のトークン化は、日本国内では、不動産を裏付けとした不動産セキュリティ・トークンを中心に拡大してきた。Progmatによると、国内STの発行累計額は3600億円に達しているが、ほとんどは個人向けに新規性を訴求した不動産ST。投資信託や株式のトークン化も進み始めているが、国債については既存インフラが強固であり、置換・併存コストを上回る実需の特定が不可欠になる。
齊藤氏はnoteで、日本国債には日銀ネットを中心とする強固な既存インフラが存在するため、単にトークン化するだけでは意味がないと指摘する。鍵になるのは、既存インフラを置き換えることではなく、ステーブルコインと組み合わせることで、機関投資家にとって明確な付加価値を生み出せるかどうかだ。
WGには、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、SBI証券、大和証券、楽天証券、JPX総研、大阪デジタルエクスチェンジ、日本証券金融、ブラックロック・ジャパンなどの金融関連企業に加え、Secured Finance、Avalanche、Datachain、Canton Networkなどのブロックチェーン関連企業も参加予定となっている。
TJGB組成プロジェクトを2026年内に開始
Progmatは、2026年5月にWGをキックオフし、10月に報告書を公表することを目指す。また、個別の概念実証(PoC)を先行または並行して進め、報告書を踏まえたTJGB組成プロジェクトを2026年内に開始することを目標としている。
今回の取り組みは、日本国債そのものを単にデジタル化する試みではない。ステーブルコインを決済レイヤーとして用い、国債という伝統金融の中核資産をオンチェーン上の担保・運用資産として接続しようとするものだ。
不動産STから始まった日本のトークン化市場は、投資信託、株式、そして国債へと対象を広げつつある。今回のWGは、日本におけるオンチェーン金融が、個人向け投資商品の段階から、機関投資家向けの資金市場そのものへ進もうとしていることを示す動きと言えそうだ。
