自民党、ステーブルコイン・トークン化預金で「オンチェーン金融」国家戦略を提言、米SECも株式トークン化枠組み準備か
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暗号資産ニュース
自由民主党政務調査会デジタル社会推進本部の「次世代AI・オンチェーン金融構想プロジェクトチーム」は5月19日、AIとブロックチェーンを活用した次世代金融インフラ整備に向けた提言を取りまとめた。決済・融資・資産運用の自動化と24時間365日化を目標に掲げ、金融を「18番目の成長投資分野」として官民一体で推進する方針を明確化。トークン化預金については日本銀行当座預金のトークン化対応を年内に論点整理するよう求めた。3メガバンク共同によるステーブルコイン発行は来年3月までの実運用開始を念頭に検討を進める。現実資産(RWA)のオンチェーントークン化や、量子コンピュータによる暗号技術の危殆化リスク対応も盛り込まれた包括的な内容となっている。

同提言は、国の重要課題や翌年度予算編成の方向性を示す「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針2026)」に盛り込まれる方向で調整が進められている。同方針は例年6月に閣議決定される慣例で、オンチェーン金融が高市政権の成長戦略の中核に位置付けられる可能性が高まった。提言を取りまとめたプロジェクトチームは平将明衆議院議員が発起人となり3月に発足し、党ブロックチェーン推進議員連盟会長を務める木原誠二衆議院議員が座長に就任。AIによる取引や決済がブロックチェーン上で完結する「オンチェーン金融」が数年以内に現実化するとの認識が、立法府の核心部分に浸透していることを示す動きだ。
米証券取引委員会(SEC)は、第三者が発行する株式連動型のトークン化証券の取引を認める可能性がある新たな枠組みを準備していると伝えられている。報道によると、SECは「イノベーション免除(innovation exemption)」と呼ばれる制度の導入を検討中で、早ければ今週中にも公表される見通しだ。これによりブロックチェーン上で発行・取引されるトークン化株式について、新たな取引ルールが整備される可能性がある。注目点は上場企業自身ではなく、第三者が発行するトークン化株式や株式連動型トークンを一定条件下で容認する可能性があることだ。SECは既にナスダックとNYSEのトークン化株式取引に関する規則変更も承認済みである。
第三者発行型トークンの実例として、海外大手取引所が展開する「xStocks」が挙げられる。同プロダクトでは、アップル、テスラ、エヌビディアなど米国株やETFに連動するトークンがオンチェーン上で発行・取引されている。発行主体は対象株式・ETFに1対1で裏付けられた商品として運営されており、配当はトークン残高に反映される一方、所有権は付与されない設計だ。一方で市場分断を懸念する声も出ている。同じ株式に連動する複数の派生トークンが複数のDeFi市場で取引されることで、価格形成や流動性が分散する可能性があるためだ。証券業界団体も価格透明性や市場接続性の不足に対する懸念を以前から表明していた。

米国では中央銀行デジタル通貨(CBDC)の永久禁止を求める動きも顕在化している。共和党議員らが「21世紀ROAD住宅法」にCBDC恒久禁止条項を盛り込むよう求めており、同法案は今週中に下院で採決される見通しだ。元上院銀行・住宅・都市問題委員会が3月に公表した法案には、連邦準備制度またはいずれかの連邦準備銀行が2030年12月31日までCBDCまたは類似商品を発行することを禁止する条項が含まれている。下院修正案ではこの「裏口的なCBDC容認」を反転させ、禁止を恒久化することを目指している。CBDC批判派はプライバシー侵害や政府による濫用リスクを指摘しており、規制環境を巡る米国の議論は引き続き活発化している。
米ミネソタ州では、銀行および信用組合に暗号資産のカストディサービス提供を認める法案「HF 3709」が5月17日にティム・ウォルツ知事の署名を経て成立した。同法は2026年8月1日に施行され、銀行機関はリスク管理、内部統制、セキュリティに関する書面によるポリシー策定を義務付けられる。クライアント資産と機関自体の資産の分別管理も求められ、サービス開始の少なくとも60日前にミネソタ州商務長官への書面通知が必要となる。同州はニューヨーク州、ワイオミング州、バージニア州に続き、銀行による暗号資産カストディを認める州のリストに加わった。一方で同州は5月初旬に暗号資産ATMを禁止する別法案も成立させており、規制の方向性は商品・サービス類型ごとに異なる対応を示している。
これら一連の動きは、2026年央の暗号資産業界の支配的なナラティブが「制度化と国家戦略への統合」にあることを示している。日本ではオンチェーン金融が成長戦略の中核に組み込まれ、米国では株式トークン化に向けた規制枠組み整備とCBDC禁止という両方向の制度議論が同時進行している。州レベルでも金融機関のカストディ参入が拡大し、トークン化された現実資産(RWA)への機関投資家の関心が高まっている。投機的な小売主導の物語から、規制された金融インフラとしてのブロックチェーン活用へと業界の重心は確実に移行しつつあり、各国・各州の制度設計競争が次の数年間の業界地図を決定する局面に入った。