BISのデ・コス氏、3,150億ドル規模のステーブルコイン市場は主要決済に不適格と主張
BIS総裁デ・コス氏が、単一性・相互運用性・健全性の3条件でステーブルコインは不適格と指摘し、決済の基軸にはトークン化預金を据えるべきだと主張。
デ・コス氏が掲げた「3つの試金石」
国際決済銀行(BIS)のパブロ・エルナンデス・デ・コス総裁は8月28日、ステーブルコインは大規模な決済手段として信用をもって担うことはできないとの見解を示した。発言の場は、カンザスシティ連邦準備銀行がワイオミング州で主催する経済政策シンポジウム「ジャクソンホール」での講演である。世界の中央銀行関係者を前にした講演の中で、63の中央銀行・通貨当局を加盟員に擁するBISの総裁は、通貨が満たすべき3つの性質――単一性、相互運用性、健全性――のいずれについてもステーブルコインは不足していると断じた。まず単一性とは、通貨の1単位が常に額面どおり別の1単位と交換できるという保証だが、ステーブルコインの送金は中央銀の帳簿上で最終的に決済されないため成立しない。発行体への信認が揺らげば、トークン価格は額面を大幅に下回ってドリフトし得る。相互運用性も、同じコインがSolanaのようなネットワーク上で独立したブロックチェーンごとに流通し、台帳間を直接移動できない時点で崩れる。さらに健全性については、自己管理ウォレットを経由する資金流動――ユーザーがブラインドサインで送金を承認できる環境――が、マネーロンダリング対策やテロ資金対策の管理網の外にほとんど置かれている点が問題だと述べた。処方箋としてデ・コス氏が提示したのはトークン化預金だ。銀行が発行するトークンを中央銀行マネーで決済するこの方式は、設計によって単一性を保持でき、決済の大部分を担う一方、ステーブルコインはより狭い用途に回すという役割分担が成り立つという。講演の全文はBISの公式サイトで公開されている。なおデ・コス氏は、2027年のラガルドECB総裁の後継候補と目される人物であり、この立場を押し進める最も影響力のある機関の論者として台頭してきた。
FSIブリーフ第33号、グループ単位の抜け穴を指摘
講演の前日、BISの金融安定性研究所(FSI)はFSIブリーフ第33号を公表した。発行体規制を管轄区域横断で比較したこの報告書は、「一貫したグローバル枠組み」があるという見方を揺るがす内容だ。報告書が見出したのは、銀行は既存の健全性規制の下で幅広い業務を認められている一方、ステーブルコイン発行体向けに特別に書かれた規則は事業範囲をはるかに厳しく制限している、という対比である。ただしその制約が及ぶのは発行主体そのものだけで、企業グループ全体には及ばない。そのため非銀行発行体は、グループの構造次第で制限業務を関連会社に振り分け、規制の網をくぐり抜けられる。FSIの結論は、大規模な非銀行発行体の監督は発行会社だけでなく企業グループ全体をカバーすべき、というものだ。規制の動きは並行して進んでいる。米国は2025年7月に決済型ステーブルコインを対象とするGENIUS法を成立させ、財務省は2026年4月に同法に基づく最初の規則案を公表した。ワシントンの姿勢はバーゼルのそれと鋭く対立する。ベセント財務長官はステーブルコインを、ドルの基軸通貨の地位を支え、米国債の需要を押し上げる「デジタル金融革命」として擁護してきたからだ。デ・コス氏の反論は資金調達側に集中している。銀行を介さず保有者に利回り的なリターンを払えるトークンへ預金が移行すれば――DeFiユーザーがイールドファーミングで知るのと同じスプレッドの力学だ――銀行はより割高なホールセール資金調達に依存せざるを得ず、その負担は貸出金利の上昇として借手に転嫁され、最初に縮むのは信用力の低い中小企業向け融資だとされる。さらに国外では、ドル連動型ステーブルコインの広範な普及が各国の通貨主権を蝕み、自国金融政策の伝達機能を鈍らせると警告した。ただし現時点でシフトは限定的だ。BISの分析によれば、ステーブルコインの時価総額は2026年4月上旬時点で約3,150億ドルであり、実際の決済用途は従来型の決済網のごく一部にとどまる。 市場をリアルタイムで追いたい読者は、Gateで現物・先物価格をライブで確認できる。
トークン化預金に軍配
COINOTAGの読み解きとしては、これは資産クラスへの規制的なFUDではなく、境界線を引く作業だと言える。8月28日のジャクソンホール講演と8月27日のFSIブリーフという2つの一次文書が一致する要点はただ一つ、BISは中央銀行マネーで決済されるトークン化預金に日常決済の大部分を担わせ、ステーブルコインをより狭い圏内に押し込みたい、という点である。発行体にとって実務上のリスクは、FSIが提案するグループ単位の監督だ。米国以外の財務省・中央銀行にとってのリスクは、デジタルドル化である。米国のGENIUS法のルールメイキングがBISの立場をどこまで受け入れるか、あるいは無視するかが、トークン化されたマネーを巡る2つのビジョンが同じレールを実際に共有できるかどうかを試すことになる。

AIによって生成され、AIによるレビューを経て、COINOTAGの編集監督のもとで公開されました。


