トランプ一族信託がCoinbase・MARA株購入、IRENが4,800億円調達、THORChainで17億円流出
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暗号資産ニュース
米ドナルド・トランプ大統領一族の資産を管理するファミリートラストが、2026年第1四半期に暗号資産関連株を購入していたことが、米政府倫理局(OGE)への提出書類で判明した。最大手取引所コインベース株は四半期中に9回に分けて買い増されており、最大の取引は10万1ドル〜25万ドル(約1,590万円〜4,000万円)の範囲だった。ロビンフッド、ストラテジー、マラソン、クリーンスパーク、ブロック株もポートフォリオに加えられている。トランプ・オーガニゼーションは大統領本人や家族が投資判断に関与していないと否定したが、就任以来のビットコイン(BTC)促進政策との利益相反を巡り、民主党からは監視強化を求める声が一段と強まっている。

AIクラウド事業者IREN(旧Iris Energy)は2026年5月14日、総額30億ドル(約4,800億円)の転換社債発行を完了したと公式発表した。当初26億ドルの募集に対し4億ドルの追加発行枠が全額行使され、手取り額は約29億6,000万ドルに達した。社債は2033年満期、クーポン1.00%で、転換プレミアムは32.5%に設定されている。同社は2億130万ドルをキャップトコール取引のコストに充当し、1株110.30ドルを上限として転換時の株式希薄化を抑える仕組みを構築した。残額は一般事業目的と運転資金に充てる方針で、エヌビディアとの戦略提携を背景にしたAIインフラ投資の本格加速を裏付ける大型調達となった。
IRENが調達した資金の使途として注目されるのが、テキサス州2ギガワット規模の旗艦拠点「スウィートウォーター」を軸とするAIデータセンター展開だ。同社は5月7日、半導体最大手エヌビディアとの戦略提携を発表しており、最大5ギガワット規模のAIインフラ整備と34億ドル規模のAIクラウド契約を含む包括的協業を進めている。エヌビディア側はIRENに対し最大21億ドル規模の出資権利を取得済みだ。2025年11月にはマイクロソフトとも97億ドル規模のAIクラウドホスティング契約を締結しており、現在売上の約9割を占めるビットコインマイニング事業から、垂直統合型AIクラウドへの転換が加速している。

クロスチェーン流動性プロトコルのTHORChain(ソーチェーン)は5月15日、ヴォールトに異常を検知し、チェーン上の取引を停止したと発表した。ブロックチェーンセキュリティ企業の分析によれば、被害額は約1,070万ドル(約17億円)に達し、ビットコイン、イーサリアム、BNBチェーン、ベース上の資産に影響が及んでいる。ネットワークは自動的に異常な署名行動を検知して停止したが、攻撃者は閾値署名方式の脆弱性を突き、秘密鍵を再構築した上で不正トランザクションを実行したとみられる。プロジェクトは数日前に参加したノードが関与した可能性を指摘しており、完全復旧には少なくとも数日を要する見通しだ。RUNE価格は前日比15%超下落した。
米政府倫理局に提出されたフォーム「278-T」によれば、トランプ大統領、メラニア夫人、扶養家族の合算保有資産では、暗号資産関連企業の取引が複数記載されている。ストラテジーのクラスA株については購入と売却を含む8件の取引が報告され、最大の購入は2月12日の5万1ドル〜10万ドル、最大の売却は1月12日の1万5,001ドル〜5万ドルの範囲とされた。マラ・ホールディングス株の購入も2件確認されており、合算した第1四半期の取引総額は2億2,000万ドル〜7億5,000万ドルの幅に収まる。エヌビディアやアップルなど大型テック株購入と並ぶ位置づけで、暗号資産関連はアルトコイン市場全体への政治的影響を改めて浮き彫りにした。
規制面では米議会の動きが加速している。上院銀行委員会は5月14日、市場構造法案「CLARITY法」を党派ラインに沿った投票で可決し、本会議審議へ進めた。下院農業委員会のグレン・トンプソン委員長と民主党筆頭メンバーのアンギー・クレイグ議員は連名でトランプ大統領に書簡を送付し、商品先物取引委員会(CFTC)の委員ポスト4席が空席である現状を踏まえ、超党派の指名を急ぐよう要請した。同法成立後にCFTCがデジタル資産市場の主管庁として大規模なルールメイキングを担う想定だけに、リーダーシップ空白は法施行の実効性を損なうリスクと位置づけられている。民主党からは大統領自身の暗号資産事業との利益相反やマネーロンダリング対策の不備への懸念も噴出した。
今サイクルを貫く支配的な物語は、米国における「政治と暗号資産の構造的接近」だ。大統領一族のポートフォリオに上場暗号資産企業株が組み込まれる一方、議会ではCFTC主管とする市場構造法案の審議が進み、企業サイドではIRENの30億ドル調達に象徴されるマイニング事業者のAI転換が加速している。同時にTHORChainの17億円流出はDeFiのDEX領域に残るセキュリティリスクを改めて突きつけた。制度整備、機関資本の流入、技術的脆弱性という三つの力学が同時進行しており、規制の輪郭が固まる夏場までが市場の方向性を決める分水嶺となる。