via BITTIMES · BITTIMES編集部著
イーサリアム共同創設者「清算なきDeFi」を提案、オラクル依存も軽減
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この記事の要点
- ヴィタリック・ブテリン氏が、強制清算を不要とする新たな合成資産モデルを公開
- DeFiが抱えるオラクル依存と清算リスクの軽減を目指す新設計を提案
目次
ブテリン氏、DeFi設計の根本を問い直す
イーサリアム(ETH)共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏が2026年6月2日、強制清算を必要としない新たな合成資産モデルを研究フォーラム「Ethereum Research」で公開しました。
公開されたモデルでは、1 ETHを2種類のオプション(決まった価格で取引する権利)に分割し、満期時の価格指数に応じてETHの配分が変動する一方、両者を合算した価値は常に1ETH相当に維持される構造が採用されています。
ブテリン氏によれば、このモデルでは担保割れによる強制清算が発生せず、価格を絶えず監視するオラクル(外部の情報をブロックチェーンへ伝える仕組み)への依存度も抑えられるといいます。
ただし同氏は、米ドルの価値をそのまま映す会計用のステーブルコインには向かないとしたうえで、将来の支出に備えて一定の購買力を維持したい用途を想定していると述べています。
「L2はもはやシャードに非ず」
リスク構造の転換、清算型との根本的な差
従来型DeFiが依存するリアルタイムオラクル
従来のアルゴリズム型ステーブルコインや清算ベースの合成資産では、ETHなどを担保として預け入れ、その価値を裏付けに価格連動型の資産を発行する仕組みが採用されてきました。
この方式では担保価格が大幅に下落すると発行済み資産を支えきれなくなるため、多くのプロトコルが一定水準を下回った担保を強制的に売却する「清算」を組み込んでいます。
清算を成立させるには市場価格を即座に取得する仕組みが不可欠となりますが、ブテリン氏はリアルタイム型オラクルへの依存こそ現在の設計が抱える根本的な課題だと位置付けています。
同氏によれば、リアルタイム型オラクルは限られた監視者や運営主体に依存しやすく、安全性や検証可能性の面で制約を抱えています。今回の提案は、こうした前提の見直しから出発しています。
債務からオプションへ、設計転換の核心
ブテリン氏が提案したのは、合成資産の基盤を「債務」ではなく「オプション」に置き換える設計であり、担保不足が発生した際に強制清算で調整する発想そのものを取り除くものです。
このモデルでは1 ETHを2種類の権利へ分割し、満期時の価格指数に応じて双方の配分比率が変化する一方、合計価値は常に1 ETH相当に保たれる構造が採用されています。
そのため担保不足によってシステム全体の価値が失われる状況が起きにくく、清算を前提とした運営モデルから距離を置ける設計となっています。
こうした違いについてブテリン氏は、通常時の価格追従性能だけでなく、急変時の挙動やオラクルへの依存度にも大きな差があると説明しています。
| 比較項目 | 清算ベースの合成資産 | オプションベースの合成資産 |
|---|---|---|
| 通常時 | 合成資産を保有し、ETHの値動きの影響を受けない | 同様に、ETHの値動きの影響を受けない |
| 価格の急変時 | 突然の強制清算が起こりうる | 目標とする水準から徐々に乖離していく |
| オラクルへの依存 | リアルタイムの価格取得が必須 | 反応の遅いオラクルでも対応できる |
| 急変時の調整役 | プロトコルが清算を執行する | 利用者がタイミングを選んでリバランスする |
同氏によれば、急激な価格変動が発生した場合でも強制清算は行われず、目標指数との乖離が徐々に広がる形で調整が進む設計となっており、市場参加者に予測不能な損失を与えにくいとしています。
加えてリバランスの実行時期を利用者自身が選択できるため、価格急変時に取引を先回りされることで生じるMEV(取引順序の操作で得る利益)の影響も抑制できるとしています。
この仕組みは予測市場で利用されるオプション型商品の構造とも共通点が多く、既存の予測市場向けオラクルを活用できる可能性にも言及しています。
「スリッページとリバランス」利用者側の課題
一方で、この設計は清算リスクを取り除く代わりに、ポジション調整の判断を利用者自身へ委ねる側面も持っています。
ブテリン氏は、頻繁なリバランスを繰り返せば短期的な値動きに振り回される可能性が高まり、スリッページによる取引コストも増加しうると指摘しています。
適用対象としてはUSD/ETH価格だけでなく、消費者物価指数(CPI)、商品価格指数、都市ごとの賃料指数など幅広い指標を想定していると説明しています。
また、各国通貨であっても年間1〜4%程度の価値変動は一般的であるとして、厳密な価格固定よりも購買力の維持を重視する用途に適しているとの考えを示しました。
Fusaka実装、ネットワーク強化が進展
既存予測市場インフラを活用する新たな発想
今回の提案は、強制清算やリアルタイム型オラクルを前提としてきた従来のDeFi(分散型金融)設計に対し、別の選択肢を提示する試みとして位置付けられています。
ブテリン氏は、このモデルが予測市場で利用されるオプション型商品の仕組みに近いことから、既存の予測市場向けオラクルを活用できる可能性にも言及していました。
とりわけPolymarket(ポリマーケット)のようなオンチェーン予測市場では、価格ではなく結果判定を目的としたオラクルが運用されており、こうした仕組みを合成資産分野へ応用できるかが検討対象の一つとなっています。
ブテリン氏はあわせてイーサリアム財団の役割の見直しにも触れており、特定の管理主体への依存を減らしながらプロトコルの自律性を高める方向で研究を進めていることを明らかにしました。
今回公表された内容は研究段階にあり実装計画は示されていないものの、オラクル依存と清算リスクを切り離した設計が成立するかどうかは、今後のDeFiインフラ設計を考えるうえで重要な検証テーマとなっています。
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