仮想通貨カード230%急増、米国がイラン資産10億ドル押収、AIがDeFi安全性に警鐘
目次
暗号資産ニュース
仮想通貨カード決済の累計取扱高が78億ドル、月間取引量は6億ドル規模に拡大し、前年同月比230%増という記録的な水準に達した。ウォレット数は136万、取引件数は2,400万件に上り、決済の約90%がVisaのネットワーク上で処理され、その内訳の62.5%をUSDTが占めている。3月に18か国で開始されたBridge連携のVisaカードは、年内に100か国以上、1億7,500万のVisa加盟店への展開が計画されており、ステーブルコイン残高をリアルタイムで購買力に変換する流れが加速している。本来「決済網の中抜き」を掲げて誕生したブロックチェーン決済が、皮肉にもVisaの消費者接点を強化する構図が鮮明になっている。
5月のWeb3業界では、DeFiプロトコルを狙ったハッキング被害が相次ぐ一方で、予測市場分野で新規プロダクトの登場や資金調達の動きが顕在化した。企業によるパブリックチェーン選定では、イーサリアム、Solana、Baseなどを用途別に使い分けるハイブリッド戦略が広がり、特に金融機関や決済事業者の参入が増えている。コンプライアンス対応コスト、手数料水準、ファイナリティの速さを天秤にかける案件が増加。DEXや予測市場プラットフォームを含むエコシステム全体が、一過性の話題から企業の本格運用に向けたインフラ選定段階へと移行している様相が明確になった。
スマートコントラクトセキュリティの非対称性をめぐる議論が再燃している。OpenZeppelin共同創業者のマヌエル・アラオス氏は、DeFi全体を「現時点では安全とは言えない」とし、Aave、MakerDAO、Compoundを含む主要プロトコルからの資金引き揚げを投資家に呼びかけた。自律型AIコーディングエージェントが脆弱性発見能力を大幅に押し上げており、防御側はすべてのバグを修正する必要がある一方で攻撃側は一点突破で済むという構造的な弱さを指摘した形だ。これに対しOpenZeppelin社は、近年の大型被害の多くが監査済みコードの瑕疵ではなく鍵管理や運用ミスに起因するとして、見解に距離を置いた。AMMを含む流動性プール設計の堅牢性が再検証局面にある。

米国は、対イラン金融圧力作戦「Operation Economic Fury」の一環として、イラン関連の暗号資産を累計約10億ドル規模で押収したと公表した。財務長官スコット・ベッセント氏はレーガン・ナショナル・エコノミック・フォーラムでの講演で、当局がウォレットそのものを差し押さえたと説明し、4月時点で公表されていた5億ドルから約2倍へと規模が拡大している。イラン国内では年率200%超のインフレ、食料配給券の導入、インターネット遮断、兵士の40〜50%への給与未払いなど、経済の急速な悪化が進行。ビットコインを含む暗号資産が、制裁回避手段から国家間の新たな金融戦線へと位置づけ直されつつある。
米国上院で審議が進む「CLARITY法案(デジタル資産市場明確化法)」をめぐり、Coinbase最高経営責任者のブライアン・アームストロング氏とJPモルガンのジェイミー・ダイモン氏が真っ向から対立している。5月14日に上院銀行委員会を15対9で通過した同法案は、本会議で60票の賛成が必要となる。ステーブルコイン利息やAML規制の取り扱いを焦点に、ダイモン氏が銀行界の立場から異論を唱えたのに対し、業界側ではGalaxy Digitalのマイク・ノボグラッツ氏らが「立法権は選挙で選ばれた議員にある」と反論。Coin Centerは2025年に銀行経由で約3兆ドルが資金洗浄されたと指摘し、規制議論の主導権争いが激化している。

イランはホルムズ海峡の支配権を新たな収益源化する構想として、「Hormuz Safe」と呼ばれるビットコイン建ての海上保険プラットフォームを検討していると報じられた。革命防衛隊系メディアが触れた政府文書によれば、海事保険料をBTCで決済し、契約をブロックチェーン上で完結させる仕組みだ。米国による大規模な暗号資産押収と並行し、制裁下の国家がビットコインを準・主権資産として運用する動きが鮮明になっている点で象徴的な事例である。中央銀行の管理が及ばないオンチェーン決済の地政学的活用が現実味を帯び、暗号資産が国家戦略レベルで組み込まれつつあることを示唆している。
今サイクルの暗号資産市場を貫くのは、「規制と地政学が同時に主役化している」という構造変化だ。Visaを介するステーブルコイン決済の主流化、AIによるDeFi脆弱性発見の加速、米国の制裁を巡る国家規模の暗号資産押収、CLARITY法案を巡る業界対立、そしてイランによるBTC主権資産化の試み——いずれもが、暗号資産を「投機の対象」から「金融インフラと国家リスクの結節点」へと押し上げている。プロトコル選定、コンプライアンス、地政学的露出という3軸を同時に評価する設計思想が、機関投資家・企業・規制当局すべてに求められる局面に入った。