トランプ氏がFRB決済網開放令に署名、金融庁は海外ステーブルコイン解禁、英中銀は保有上限見直し
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米国でドナルド・トランプ大統領が2026年5月19日、暗号資産(仮想通貨)企業による連邦準備制度の決済システムへの直接接続を再評価する大統領令に署名した。これまで連邦準備銀行のマスターアカウント取得が難航してきた非銀行系のブロックチェーン関連企業や無保険預託機関を対象に、中核決済インフラへの接続要件を見直す。SEC、CFTC、CFPB、NCUA、FDIC、OCCの6機関には90日以内の既存規制の洗い出しが課され、FRBには120日以内に法的・政策的枠組みを検証する義務が定められた。実現すれば、銀行を介さない米ドル送受金が可能となり、取引所への入出金迅速化や提携銀行依存の解消が進む見通しだ。

日本では金融庁が5月19日、海外で発行されたステーブルコインを国内で決済手段として取り扱えるようにする改正内閣府令を公布した。「電子決済手段等取引業者に関する内閣府令」などを改正し、6月1日から施行される。日本の制度との「同等性」が確保された外国の信託型ステーブルコインを電子決済手段に位置付けるもので、発行者が現地で銀行法や資金決済法相当の免許を保持し、裏付け資産が監査済みであることなどが条件となる。円建てのJPYCが先行してきた国内市場に、ドル建ての海外勢が正規ルートで加わる素地が整う。
英国ではイングランド銀行(BoE)が、ステーブルコインの保有上限に代わる規制案を6月に草案として公表する方針を示した。サラ・ブリーデン副総裁はロンドンで開催された「シティウィーク2026」で、発行可能なステーブルコインに上限を設ける案について、業界にとって保有上限よりも低コストとなる可能性があると語った。BoEはこれまで個人2万ポンド、企業1,000万ポンドの保有上限を提案してきたが、業界の強い反発に直面していた。米国の規制スケジュールに沿い、年末までに最終ルールを固める計画も明らかにされた。
米SECは公開会社向け規則の包括的見直しを提案した。20年超ぶりの大規模改革となる今回の案では、新規公開企業が上場直後から「シェルフ登録」を活用できるようになり、現行で約1年とされる待機期間が撤廃される。7,500万ドルの公衆フロート要件も廃止される方向で、上場後の機動的な資金調達が可能になる。直近18か月で上場を果たしたBitGoやCircle、Bullishに続き、IPO候補として観測されるKrakenやSecuritizeなどの暗号資産関連企業にとって、コンプライアンス負担の軽減と上場後の資金調達柔軟性の双方が魅力となる内容だ。

トランプ大統領のTruth Socialと提携する資産運用会社Yorkville Americaは、提出済みの複数の暗号資産ETF申請を取り下げた。対象には「Truth Social Bitcoin ETF」「Truth Social Bitcoin & Ethereum ETF」「Truth Social Crypto Blue Chip ETF」が含まれる。同社は1933年証券法に基づく登録から、1940年投資会社法の枠組みへ商品戦略を転換すると説明した。2026年の米現物ビットコイン(BTC)ETFへの純流入は約7億9,000万ドルにとどまり、2025年通年の250億ドルから大幅に縮小しており、暗号資産ETF市場の冷え込みも背景にある。
米上院ではエリザベス・ウォーレン議員が5月18日付でOCCのジョナサン・グールド長官に書簡を送付し、リップル、コインベース、サークルを含む9社への全国信託銀行免許の付与状況について、6月1日までの情報提供を要求した。書簡はこれら申請企業を「信託会社というよりも仮想通貨銀行のように見える」と指摘し、伝統的銀行と同等の安全策を伴わない参入を警戒した内容だ。一方、Kraken傘下のSPDIは2026年3月にカンザスシティ連銀から限定版Fedマスターアカウントを取得済みで、リップルやAnchorage Digital、Wiseも続く構えを見せている。
今週の規制ニュースを貫くのは、暗号資産が伝統金融インフラへ正面から接続される構造転換という単一テーマだ。米国は決済網と公開市場の双方で暗号資産企業を取り込む方向へ舵を切り、日本は海外ステーブルコインの法的受け入れに踏み出し、英国は保有上限という防衛的措置を見直す方向にある。DeFi(分散型金融)やアルトコイン主導の前サイクルとは対照的に、銀行免許・決済口座・上場規則という制度的アクセス権が新たな競争領域として浮上している。コンセンサスメカニズムの議論はもはや技術層にとどまらず、各国の金融主権を巡る政策競争の中心軸へと移りつつある。