SEC、トークン化株式の「イノベーション免除」を今週公表へ|フィスコは暗号資産事業撤退、米国保有率10%に回復
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米証券取引委員会(SEC)が、トークン化株式の取引を可能にする「イノベーション免除」制度を早ければ今週中に公表する見通しであることが明らかになった。関係者の話として伝えられた内容によれば、上場企業の明示的な同意や裏付けがなくとも、第三者がトークン化株式を発行することを認める方向で検討が進んでいる。発行された第三者型トークン化株式は、DeFi(分散型金融)プラットフォーム上で流通する見込みで、米国の証券取引インフラに歴史的な転換点をもたらす可能性がある。SECはこれまで数百社の市場参加者から意見を集め、議決権や配当などの権利を従来株式と同等に扱う案も俎上に載せている。

同免除制度の中核は、トークン化証券を「発行体本体または発行体の代理によるもの」と「発行体と無関係な第三者によるもの」の2区分に分類する点にある。SECは3月にナスダックが提案したトークン化証券取引を可能にする規則変更を、4月にはニューヨーク証券取引所(NYSE)の同種申請を相次いで承認しており、今回の免除はその延長線上に位置づけられる。エヌビディアやアップル、テスラといった主要銘柄がブロックチェーン上で取引対象となる道筋が整いつつあり、ウォール街と暗号資産業界の境界線が急速に薄れている。SEC内部には反対意見も残るが、ヘスター・パース委員が制度設計を主導してきた。
一方、東証グロース上場のフィスコは5月14日、暗号資産・ブロックチェーン事業からの撤退を正式に発表した。同社は2026年12月期第1四半期から該当事業セグメントを廃止し、報告セグメントを従来の3区分から「情報サービス事業」と「広告代理業」の2区分に再編する。これに伴い、自社発行の暗号資産フィスココイン(FSCC)に関する利用促進策はすべて終了。2025年12月期分として予定されていたトークン焼却(バーン)も中止される。ただし同社はFSCCそのものを消滅させるものではなく、保有者のウォレット管理や既存利用に直接の影響は生じないと説明している。
SECの動きの背景には、現実資産のトークン化(RWA)市場の急成長がある。ブラックロックやフランクリン・テンプルトンといった大手資産運用会社がすでにオンチェーン・ファンドを展開しており、RWA市場規模は300億ドル規模に迫る水準まで膨張した。さらにHyperliquidなどのDEX(分散型取引所)では、SpaceXのIPO前先物などの合成デリバティブ取引が先行展開されており、規制当局として制度空白を放置できない状況に追い込まれていた。今回の免除がDEX上での証券取引を実質的に追認する形となれば、伝統金融とオンチェーン金融の融合が一段と加速する。

米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した家計経済福祉報告によれば、2025年に暗号資産を投資または決済に利用した米国成人は全体の約10%に達し、2024年から増加に転じた。ピークだった2021年の12%には届かないものの、3年ぶりの高水準を記録した形だ。内訳では投資目的が9%、決済利用が2%、家族・友人への送金が1%となっており、銀行口座を持たない層では決済利用率が6%と銀行利用層の3倍に上る。ジャック・ドーシー氏率いるBlockは米国内80万超の加盟店でビットコイン・ステーブルコイン決済を可能にしており、日常決済への浸透が静かに進む。
機関投資家サイドでは選別色が強まっている。ゴールドマン・サックスが提出した2026年第1四半期の13F報告書によれば、同行はXRPおよびSolana関連ETFの保有を完全に解消した。2025年第4四半期時点で約1億5,400万ドル規模のXRP関連ETFを保有していたが、Bitwise、フランクリン・テンプルトン、グレースケール、21Sharesの各商品から一斉撤退した形だ。一方でブラックロックのiShares Bitcoin Trust(IBIT)には依然6億9,000万ドル規模のポジションを維持しており、Circle Internationalなど暗号資産関連株への配分は249%増と大幅に積み増している。アルトコインETFから主要銘柄および周辺エクイティへの資金回帰が鮮明だ。
今サイクルを貫く支配的テーマは、規制の制度化と機関投資家による選別の同時進行である。SECの免除制度は伝統証券を分散型インフラへ橋渡しし、フィスコの撤退は国内事業者の整理を示し、ゴールドマンのリバランスは資金が成熟資産へ集約される構図を浮かび上がらせる。米国の小売層では暗号資産利用が緩やかに回復し、決済ユースも実需として根付き始めた。規制当局・機関投資家・小売の三層が同時に再構成される局面で、ブロックチェーンは投機商品から金融インフラの一部へと役割を変えつつある。次の数四半期は、この制度的成熟がどの程度の資本流入を呼び込むかが焦点となる。