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JPYC、ステーブルコイン割引を阻むカード規約の懸念を公正取引委員会に提出

円ステーブルコインJPYCが、ステーブルコイン割引を阻むカード加盟店規約をめぐり9月14日に公正取引委員会へ情報を提出したことを確認。10月9日公表、受付拠点は150超、発行残高は約77億円に達した。

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2026年10月9日, 18:13 JST1分で読めます
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公正取引委員会への情報提出

円建てステーブルコイン「JPYC」の発行体であるJPYC株式会社は、10月9日(金)、日本のキャッシュレス決済市場における競争条件について、9月14日に公正取引委員会へ情報を提出したことを確認した。ステーブルコインによる決済が日本の小売の現場に本格的に入りつつあるいま、提出資料は企業自身の加盟店割引に関する見解とあわせて公開された。争点は一つに絞られる。JPYCを受け入れる店舗は、決済コストの削減分を顧客に還元できるのか、それともカードネットワークの契約に抵触するのかという問題だ。JPYCの価格は設計上1対1で円と固定されており、発行および償還は厳密に1円あたり1JPYCで行われる。2025年10月27日の発行開始以来、実店舗、モバイル販売業者、ECサイトを合わせて150以上の受付拠点に普及している。決済はブロックチェーン上での直接的な価値移転によって完了するため、参加加盟店に手数料は一切課されない。この手数料ゼロの仕組みが争いの発端となった。加盟店の間では、そのコスト差を原資にJPYC決済の顧客向け割引や送料無料を打ち出す動きが始まり、導入を検討する店舗も増えている。ところが発行体によると、こうした優遇措置がカード加盟店規約に違反するのではないかと不安を抱く店主から問い合わせがあり、実施を見合わせる例も出ている。JPYCがこの懸念への対応として競争当局に事実関係を持ち込んだのが、今回の提出に至った経緯だ。

争点となる契約条項は3つ

同社の主張の核にあるのは、クレジットカードの加盟店契約に広く盛り込まれているという3つの禁止条項だ。カード決済の顧客への追加料金の禁止、現金決済の顧客への割引の禁止、そして他の決済手段の推奨や誘導の禁止である。JPYCは、これらの条項が店舗による決済手段別の価格設定や、より安い選択肢を顧客に伝える行為を制約しかねないと指摘する。同社はその根拠を公正取引委員会自身の先行調査に求めている。2022年4月のクレジットカード取引に関する調査報告書は、加盟店割引や誘導に対する画一的な禁止は、店舗間の顧客獲得競争を弱めるおそれがある場合に独占禁止法上の懸念につながりうるとし、有力なカードブランドによる制約が他の決済事業者を排除する可能性にも言及していた。報告書のこの論理は、ステーブルコインを含む新たな決済基盤での割引にも等しく当てはまるとJPYCは読み解いており、節約分を顧客に還元することは消費者の利益になり、決済手段間の健全な競争を促すとしている。発行体は、9月14日の提出が特定の事案に関する相談や申告ではなく、公開した見解はあくまで同社の自見であり委員会の見解ではないと強調する。契約文言に迷う加盟店や、決済事業者から優遇停止の圧力を受けている事業者向けの相談窓口を開設したほか、加盟店向けの導入ガイドや事例集の公表も計画している。2026年8月31日時点でJPYCの発行残高は約77億円、アカウント申請は約2万3,000件に達しており、同社は従来の金融機関と同等水準のAML/CFT対策およびKYC審査を維持していると説明する。代表取締役の岡部典孝氏は、JPYCを加盟店手数料に依存せずに構築された開かれた公共インフラと位置づけ、その恩恵を加盟店が自由に顧客へ還元できるべきだと述べた。

私たちの見方はこうだ。今回の提出は、カード決済向けに書かれた加盟店契約を、日本でのステーブルコイン競争の遅延化に使えるのかを試す初期の事例である。JPYCは委員会に裁定を求めているわけではない。むしろ、カードネットワークが異議を唱えたときに加盟店が拠り所にできる記録を文書として積み上げている。2022年の報告書が「画一的な割引禁止は独占禁止法上の疑問を生みうる」と当局自身の見解として記録に残っている以上、スタートアップからの申告に通常伴う説得力を大きく上回る土俵がJPYCにはある。委員会が今後実質的に関与すれば、日本のキャッシュレス決済をめぐる価格設定の自由は大きく広がるはずだ。それまでの間、契約上のリスクは各加盟店が自ら抱え込む形が続く。

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